「ああ、変わりないよ。そっちはどうだ?」 「うん、こっちも大丈夫だよ。リーシュコードも、私も、とーさんも元気」 玲子は、ゆったりと響く声に耳元を心地よくすぐられながらこたえる。 誠は、湘南の海とサーフィンに恋をして、 中学卒業と同時に故郷を飛び出し、叔父である鉄平の元に転がり込んできた元やんちゃ坊主だ。 だから自分にサーフィンを教えてくれた鉄平には、 今でも人生の師匠的な感謝と尊敬とを捧げていた。 玲子が誠をまこ兄と呼ぶのは、未だに気を抜くと顔を出すその頃の癖だ。