玲子の8歳年上の従兄妹、新藤誠は、
年期の入ったサーファー生活で肌や髪だけではなく声までもが色濃く潮焼けしていた。
たとえ海のない長野に戻ってから、すでに3年もの月日が過ぎていようとも。
誠は、玲子と共にリーシュコードを切り回してきたかつての運命共同体であり、
サーフィンと料理を教えてくれた師匠でもあった。
オープン当初は取りたての調理師免許を抱えたお嬢ちゃんだった玲子が、
どうにかこうして一人前になることができたのは、
誠が長いときをかけて厳しく鍛え、暖かく見守ってくれたおかげだ。
今は誠は、故郷の長野に戻り、家業の旅館『あらふじ』を継いでいた。
