壁の鏡の中では、身長170を越す細身の女が、 飾り気のない白いシャツ姿で照れ笑いを浮かべている。 唇に紅だけがにじむそっけない化粧といい、 無造作に束ねた鎖骨にかかる黒髪といい、 その姿はどう見ても、30歳近くにもなって「まこ兄」が似合うタイプではなかった。 「……誠、久しぶりだね。元気にしてる? そっちはどう?」 玲子が慌てて言いつくろうと、耳元で錆びた笑い声が響く。