リーシュコードにて




 玲子は、自分と誠との、笑顔をなくした長野時代を振り返る。



 あの頃玲子は、そして誠は、お互いの中に永遠の青春時代を見ていた気がする。



 現実の相手と分かり合うことよりも、

記憶の中の輝いたイメージを壊さないことを、無意識のうちに優先していたのだ。
 


 だから誠は、辛いときには学生時代の友達と会って自分を支えたし、

玲子は、限界が来ると誠とぶつかり合う前に湘南の海に逃げ込んだ。



 玲子の、誠の中に、夏の日の輝きがないと知ることは、

互いにとって別れ以上の痛みだったのだ。



 そして……辛いときに目をそらしあう2人なら、

共に笑い合えなくなる日はやがて訪れる。