「お湯沸いてるから。 タオルと、栄治のは着替えもある。 蒸しタオル作ろうか?」 「いや、俺がやるからいい。お前は家に戻ってろ」 そしてそっけなく言い捨てる誠の声を聞きながら、玲子は、左手の薬指を見つめ、 さっきまでのあの幸せは、自分の願望が生み出した幻ではないかと肩を落とした。 だけど……。 その細い指の付け根には、誠がつけた歯型が、 エンゲージリングのような赤い跡となってまだくっきりと残っている。