「誠さんは馬鹿だよ。 俺なら、家よりも仕事よりも絶対に先輩選ぶのに。 だって好きなら、それしかないだろ?!」 その瞬間栄治は、痛いほどの眼差しで玲子を見つめ、 カウンターを拳で叩いた。 玲子は、一瞬呼吸も忘れて、猛る瞳の栄治に見とれる。 「……志保ちゃんは幸せだね。 栄治、いい旦那さんなんだ」 そして潮騒だけが響く沈黙を破り、寂しげに微笑んでつぶやくと、 栄治は、複雑な顔をして指輪の光る左手をそっと隠した。