「誠といっしょなら、なんにだって耐えられると思ってたんだけどね」
カウンターの内側に戻った玲子は、熱い湯気が立つ皿を置いてそう続けた。
だけど。
新藤家と結納を交わし、誠の婚約者となった玲子は、
自分と誠がこれから共に作り上げていく未来が、新しい職場となったあらふじが、
長すぎた青春時代の輝きから見事に切り離されているという当たり前の事実に、
改めて愕然とした。
もう二度と誠と共に、
潮風を感じながらサーファーたちを憩わせることはできない。
誠は凍りつくような板場で、玲子は埃一つない客室で、
見知らぬ人々を迎え続けるしかないのだ。
それは孤独な作業だった。
