玲子が鉄平と共に、長野へと、
旅館あらふじへと旅立って行ったのは、年が明けてすぐの吉日だった。
表向きは結納のためだったけれど、
それは事実上の嫁入りだと言ってもよかっただろう。
結納を済ませた玲子は、鉄平を見送るとそのまま旅館あらふじの寮に入り、
次の日からは、慣れない着物と格闘しながら仲居として働き始めていた。
近い将来若女将になるための準備として、
今までまるで縁がなかったお茶やお花の稽古も始めた。
玲子としては、誠と共に板前の修業にはげみたかったけれど、
女が板場に立つことは、昔気質の伯父も伯母も許さなかったのだ。
挙式の予定は、その年の6月になっていた。
