リーシュコードにて




 了解。それじゃ、私は祝電送るね。



 玲子は、おめでとうの気持ちを込めて明るくそう告げようとした。



 だけど……それは声にならない。
 


 指先に触れる唇は、固く凍りついたままだ。



 やがて誠の低い囁きが、携帯越しに再び響き始める。



 それは気のせいか、まるで過去の重い殻を脱ぎ捨てているかのように苦しげだった。



「もう玲子には、俺から連絡はしないことにするよ。

玲子からしてもらっても、ごめん、返事はできそうもない。

いろいろ……忙しくなるからな。それじゃ、元気で。今まで……ありがとう」



 玲子の返事を待たずに、電話は一方的に切れた。