「馬鹿。今の俺にとっては、玲子は誰より女なんだよ」 すると熱い囁きと共に、固い髭が耳元を刺す。 そしてそれが、玲子の限界だった。 玲子は、なだめるように背に回していた両手で、誠を思い切り抱きしめた。 「私、好きだった。誠のことずっと」 次の瞬間、乾いて皮のむけた唇に自分の唇を押し当てる。 爆発しそうな鼓動の中に、岸から沖に向かって吹き、 ボードを走らせるオフショアの風の音を微かに聞いた気がした。