「誠、栄治がいるよ。誠の夏は栄治の中に残る」
玲子は、立ち上がり、誠の肩に手をかけてそう言った。
「……私がいるって、言えなくてごめんね」
そして囁きと同時に右手を首筋に回し、反射的に目を閉じる誠の額に、
額を一瞬だけ押し当てる。
誠の夏を託された、あの遠い日と同じように。
「泣いてもいいよ。昔、お母さんが死んだときには、誠が泣かせてくれたでしょ?」
そしてそう口にした瞬間、誠が慣れた手つきで肩を引き寄せ、
バランスを崩した玲子はその胸に崩れ落ちた。
中腰で抱きとめた誠は、背を丸めてひんやりと香る髪に頬をよせ、
そっと玲子にもたれかかる。
