リーシュコードにて




 玲子は衝撃を飲み込むと、グラスと氷を取りに台所に立つ。


 かつてボンベイ・サファイヤで、リーシュコードオープンの乾杯をしたとき、

最後の乾杯もこのジンでしようね、と、

冗談のように笑い合ったことを切なく思い出しながら。



壁の振り子時計が、時の足音をカチコチと響かせている。



「わざわざ来てくれたのは、最後の乾杯のため?」



 やがて重いトレイを手に居間に戻った玲子は、

指先の震えを止めてボンベイのロックを作ると、できるだけさり気なくそう言った。