玲子は、言葉をなくして壁際の赤いショートボードに歩み寄る。 大人になったら家業の旅館を継いで、サーフィンはきっぱりと止めること。 それは、誠が15歳で湘南に出てきたときに、両親と鉄平と交わした約束だった。 そして結婚を決めた今、誠は、長すぎた青春時代に別れを告げて、 玲子と共に過ごした灼熱の日々を過去の中に封じ込めようとしているのだ。