「雪?」


線路の上に小さな雪が降りてきて、あたしは顔を上げた。


「……うそ」


ガタン、ゴトン……


向かいのホームに電車が滑り込んできて、あたしの小さな声は掻き消された。

視界を遮る電車が走り去って、誰もいないホームが目に映る。


「ばかだな」


一瞬、彼がいるような気がした自分が悲しすぎて、涙が込み上げてきた。


「誰がばかだって?」

「え?」


少し息を乱した低い声がして、振り向くと。


「俺のこと?」


手の届きそうな距離に、彼がいて……


「……なん、で?」


壊れてしまうんじゃないかって思うくらい、心臓が激しく暴れ出した。