柔らかそうな茶色の髪が、春風に吹かれて舞い上がる。

彼は両腕を腿の上に乗せ、前傾姿勢をとった。


ひゃぁっ!


真っ直ぐな視線に、慌てて目を逸らす。


ってゆーか……

あたしを見てるわけじゃないから!


自分で自分に突っ込みを入れ、恐る恐る視線を戻してみた。


ドキンッ―――…


彼は相変わらずこっちを見ていて。

目が合ったような気がして、胸が苦しくなった。


ガクン、と電車が動き出して。

あたしの身体は『ここにいたい』っていう思いすら叶わず、彼から離れてゆく。


「また明日……」


届かないってわかってるけど。

言葉にしないと、全部消えてしまいそうなの。


遠ざかる彼を、見つめることしか。

できない恋だけど……