月夜の泪






「……俺が入れた」

「波留は悪くないの!!私が入りたいって無理矢理入ったの!!」


二人の庇いあうような態度に苛立ちは募るばかり。

総長としてではなく、桐島 蓮南としての怒りが何故か膨らむ。


「……説明しろ、そう言ったんだよ?」

「…蓮南…」

「……黙れ」


大雅の言葉を遮り波留たちに視線を移す。

勿論、裕香が狙われやすくなることもあるし。それに私の顔がバレたらどうなるか…それを考えられなかったわけじゃないだろうけど。


「…わかってるな?」

「…ああ」


スッ、と顔を上げた波留に続き立ち上がり他の皆も仕方ない、と言った様子で黙っている。


「……いつもの倍だから」

「……ッッ……」


それだけ言い思いきり波留の顔面を殴れば勢いよく吹っ飛んぶ。


仕方ないこと…酷い、そう言われたって仕方ないけど遊びで族やってるわけじゃない。
上が守れなければ下に示しがつかない。


「……二度はないからな」

「……ッッ…わかった」


それだけ言えばソファーに座り直し、この苛つきを抑えようと煙草に火をつける。


「波留っ!!…痛そう…大丈夫?」

「……ああ」


未だに頬を押さえて壁に寄りかかる波留に駆け寄り心配そうに話しかける裕香。


ああ、苛々する。


それと同時に心配する裕香と波留のやり取りを見ていて苛立ちとは違う何か黒い感情が胸を支配する。


「蓮南…?」

「……黙れ」


スッ、と立ち上がった私を未だ頬を抑えながら聞く波留を見もしないで言い捨てる。


「………今日は帰る」

「あっ…ちょっと待てよ蓮南!!」


大雅の言葉を待たずに足早に部屋から出てバイクのもとへと向かう。