月夜の泪





「……来てたんだ」

「ああ、仕事が片付いたからな」


家につけばリビングで寛ぐのは久しぶりに見るボスの姿。


少し前からアメリカかどっかに始末屋の仕事で出掛けていたボスは心做しか少し疲れているように見えた。


「…お疲れ様、コーヒー飲む?」

「珍しいな…貰うよ」


普段は滅多にそんな事を言わない私に少し驚いたのか一瞬煙草を吸う手を止めてから微笑み答えるボスにつられて私も微笑む。


「……おっ、帰ってきたのか」


シャワーでも浴びていたのかタオルで頭をふきながら出てくる浬津に「ただいま」とだけ言い二人分のコーヒーをテーブルに置く。


「…久しぶりに飲んだな、このコーヒー」

「ああ、相変わらず絶品だな」


コーヒーは母親がよく煎れてくれたのを見よう見まねで覚えたけど、…まあ面倒だからあんまり煎れないけどね。


でも、それを美味しそうに飲む二人を見てると自然と頬が綻びる。


「……着替えてくる」


仕事の事を思いだし少し急いで部屋へと向かい服を着替えて行く。


……確か、今日は大谷組の組長の殺人依頼だったっけな…じゃあ適当でいっかなぁ…


麻薬とかの密輸とか、強姦……まあ恨まれても仕方ないか…


そんな事を考えながら黒ずくしの服に着替え最後に銃と短剣を取り出し部屋を出てリビングに向かう。