「…けど違った、離婚した後父さんが言うのはお前の事ばかり、蓮南なら簡単に出来ることなのに、蓮南に会いたい……酒を飲んで帰ってきたらそればかりだよ、俺が何を思ったかお前にわかるか?」
まるで鬼のような形相で話す克を見て、私の知ってる兄じゃない…そう感じた瞬間恐ろしくて体が震えた。
「…俺は、いらない子だったんだ」
「……ッッ……」
悲しそうに話しているのにそれすらも恐ろしい。
「……でも、居場所を求めたんだよ。そして見つけたのは族である"黒蛇(コクジャ)"いつのまにか俺らは全国でも上の方にいた。初めてお前に勝てた気がした……だが、噂で聞いたんだよ……紫色の目をした海炎に入ったばかりなのに強い奴がいる、ってな」
そこまで言いガチャっと音をたて顔の方に銃口を向ける克。
「……すぐに分かったよ、お前だってな?どこにいたって俺はお前より下、だけどお前をこの世から消せば…」
――…俺は認められる。
そう言い狂気の笑みを溢せば一歩一歩近づいてくる克。
兄を…克をここまで狂わせたのは私。
なんと言ってもただ一人の兄――…もし私が死ぬことで救えるなら……
そんな事を考え目蓋を閉じたとき――…
「蓮南っ!!」
不意に聞こえたのは大切な大切な親友の声。
目蓋を開け視線を動かせばそこには汗まみれの伊折の姿。
「……どうしているの!!」
「…忘れたか?何があっても守る…親友の約束だろ?」
余裕を見せ笑う伊折に思わず涙が出そうになった。
「……絶対死なない」
守るために来てくれた伊折…そして伊折を守るのは私だけ。
死なせない、死なない…なにがあっても。

