「…母さんが殺され、た?」
ただその言葉だけが悩に反響する。
「お前ッ…ふざけんな!!」
そう言ったかと思えば波留が克に殴りかかろうとするが信条に止められる。
他の皆も次々に他の奴らと殺りあいを始めまた騒音が耳に届く。
「あはッ…ははははっ!!」
「…なんだお前?」
いきなり笑い声を上げた私に今度は克が訝し気に見つめる。
「…はっ、母親が殺されたと知ったらこの様が…所詮世界一もこの程度かッ!!」
克が笑いながら見下した言葉を紡ぐが、何も耳に入らない。
ただ耳に届くのは先程の克の言葉だけ。
「…蓮南ッ、危ない!!」
不意に響いた蒼の言葉にさえ反応出来ず数秒遅れて振り向けば金属バットが振りかざされた時。
死ぬ、かな?
そんな事を思い目を閉じるがいつまでたっても待っていた衝撃は起こらない。
ただ、聞き慣れた声が耳に響く。
「…おい、俺の親友が何くたばってんだよ」
その声に瞼を開ければ、会いたくて会いたくて仕方なかった人物が目に写る。
「…伊折ッ…」
何でいるの?目を覚ましたの?
もう体大丈夫なの?
聞きたい事は沢山ある……けど何よりも伝えたかったこと。
「…守ってくれて、ありがとうッ…」
ずっと伝えたかった。
"ごめんね"
それを何よりも伊折に伝えたかったけど…皆に出会ってわかった。
ごめんね、より
ありがとう―…それを言われた方が誰でもきっと嬉しいから。
「…ああ、どういたしまして」
そう言えば前みたいにふわり、と私の大好きな笑顔をむけて頭を撫でてくれる伊折。
「会いたかった…ッ」
堪えきれず涙混じりに言えば呆れたような、でも優しい笑みで強く抱きしめてくれる伊折。
「…お前生きてたのか」
「あ?あぁ…てめえか…昔の借りはしっかり返すから安心しろよ」
不機嫌そうな顔の克に嘲笑うかのように答える伊折。
伊折が戻ってきた。
その事実だけで先程までのような感情は消え立ち上がる。
「母さんの分、伊折の分…全部お前には償ってもらう」
それだけ言えば伊折と拳を当て背中を合わせ私は克へと勢いよく地面を蹴り走る。
こんな所でくたばる?
……まさか、私には守らなきゃいけない者がいて、帰るべき場所がある。
「これで、終わりにしよう…お兄ちゃん」
「……ッッ…」
それだけ呟けば顔面を思いきり蹴り克は数m吹っ飛ぶ。
「…やっぱり、負けたか…」
力無くそれだけを呟き瞼を閉じる克を見て回りの奴らへと声を張り上げる。

