月夜の泪






「ふぁー……、眠い…」


大きく伸びをしながら言えば軽く目を擦り辺りをぐるりと見渡す。


確か……ボスの腕のなかで安心して寝ちゃったんだよね。


そこまで思い出し、ベッドから起き上がりのそのそと洗面所の方に向かう。


「……あれ?皆は?」


リビングに行けば既に昨日のような大人数はいなくて浬津とボスの姿だけだった。


「起きたか、あいつなら帰ったぞ」

「なんか、大雅と塁に引きずられるようにしてだけどな」


ケラケラと笑いながら話す浬津とボスの言葉に頷きふぁ、ともう一度欠伸をする。


「……さて、今日仕事できるか?」

「………当たり前じゃん」

「俺はいつでもいいよ」


ボスの言葉に不敵に笑みを向け言えば安心したように口元を緩ませるボス。


「今日の依頼は大企業の令嬢の護衛だ、家はこの地図にある……それと、今日は二件依頼があるから別々で頼む」


ボスの言葉に頷き、結果私が令嬢の護衛。浬津は別件の方になった。


「……護衛か、またパーティーかな…」


人混みが嫌いな私からすればパーティーなどの護衛以上に面倒なものはない。


まあ、仕事だし仕方ないかー……


「んー…これでいっかな」


パーティーじゃない、という僅かな期待を残しスーツに着替えてまたリビングへと戻る。


「…蓮南とは今日、反対方向なんだよな…」

「私、倉庫に寄るし自分のバイクで向かうからいいよ」


いつも送ってもらっている浬津に言えば「そうか」と納得したような顔。


「……じゃ、私行くね」

「ああ、頼んだな」

「頑張れー」


ボスと浬津に見送られ憂鬱な気持ちのまま私は地図にある家へとバイクを走らせた。