月夜の泪





信条―…信条 悠(シンジョウ ユウ)
克のいる黒蛇の副総長……


「……どう、して番号が…」


そこまで言いかけ言葉を飲む。

今更だ、どうして番号がわかったかなんてあいつらに対しては愚問だろう。


「………電話の内容は…」


なんとか騒ぐ心を抑え込み平静を装い大雅に内容を促す。


「…明後日の夜八時、"思い出の場所"で待っている、克からの伝言だと言ってた…」

「……ッッ…ははっ…」


大雅の口から出た言葉に息を飲むが、次の瞬間には渇いた笑い声を上げる。


「……ふざけるな……」


ぼそりと呟いた言葉は自分でも驚く程、低くそこには紛れもない怒りが含まれている。


「……蓮南、今のお前には俺らがいる」


「そうだろ?」と言い波留を見れば優しく微笑み大雅に頷き口を開く。


「……大雅の言う通りだ、これで全て終わりにするんだろ?」

「……ッッ…そう、だね…」


一瞬でも昔のようになりかけた事に反省し力無く微笑むが次の瞬間にはその瞳は世界一の座につく総長のものと変わる。


「………皆を起こせ、全て終わりにするために、臨時集会だ」


そう言えば二人も力強く頷き部屋から姿を消す。


「………大丈夫、だよね」


この場にはいない、伊折に話すように空を仰ぎながら呟く。


もう、誰も傷付けない。
否――傷つけてはいけない。


全て終わった時は、伊折もそろそろ目を覚まして、ね。