「――…♪〜♪〜」
小さい頃、克とよく歌ってた歌を思い出し無意識に鼻歌から口ずさんでいた。
カタン―…っ
不意に浴室の外から聞こえた音に反射的にタオルを巻き付け銃を向け浴室のドアを開けた。
「……波留」
「…あっ、悪い」
波留達がいた事をすっかり忘れていてお互い、バツが悪そうに沈黙が続く。
「……あっ、何かあった?」
「……いや…それより、ふ、服着てくれ」
耳を赤く染めながら言った波留の言葉にやっと自分がタオル一枚だった事を思いだし柄にもなく慌てて浴室に戻った。
「………びっくりした…」
扉を背に凭(モタ)れ掛かり溜息とともに小さく言葉を漏らす。
持ったままの銃を置き用意していた服を急いで着込み一度、深呼吸し浴室からそこには波留の姿は見当たらない。
……部屋、戻ったのかな?
そんな事を考えれば、ふっと悲しみと寂しさが胸を過る。
………別に家ではいつも一人だし。
自分の感情を消し去るように一人心の中で言い訳をしくるっ、と部屋を見回す。
ぴたりと視線が止まったのはベランダ。
そこには煙草を吸いながら空を仰ぐ波留の姿。
…戻ってなかったんだ…
波留を見つけた瞬間に湧き上がるのは紛れもない安堵と喜び。
未だ何故こんなに喜ぶのかは分からなかったが悶々と考えるのを止めベランダに近づいた。

