片思い中

「ごちそうさま、有り難うな」
 空になった缶をそのまま鞄にしまおうとする彼に、私は手を差し出した。
 「捨てとくよ」「えっ、悪いよ」「いいよ、どうせ自分の分も捨てなきゃいけないし」「でも……」「いいから」最後は、奪い取る様な形で彼から缶を受け取った。
「こっちこそ本当に有り難うね。あなたがいなかったら、私、委員長の仕事ほっぽり出して帰るつもりだった」
「ははっ、君らしいっちゃ君らしいな」
 明るさの戻った彼の笑顔に、泣きそうになるのを私はぐっ堪える。冷えた空の缶を右手に、未開封の冷めた缶コーヒーを左手に握り締めて。
「普段あんまり話したこと無いけど、君と話せて楽しかったよ。じゃあね」
「……うん、また明日」
 軽く駆けて行く彼の後ろ姿に、私は空の缶を持った手を小さく振った。彼の背中が見えなくなってから、私は鼻を啜る。吐く息が、白い。