「ふふっ。よかった、まだ帰ってなくて……。二本買ったから、とっくに帰ってたらどうしようって思ってた」
「わざわざ買ってきてくれたの? 別にお礼なんてよかったのに」
「ううん、助かったから」
 言いながら、私はおずおずと彼の隣に座ってみた。彼は特に嫌がらず、私が渡した缶コーヒーを開ける。吐く息と同じくらい白い湯気が、ふわっと立ち上がった。一口飲んで顔を綻ばせる彼を見て、ほっと胸を撫で下ろす。私はしばらく缶コーヒーを開けずに、かじかんだ手で玩ぶことにした。