「華穂ちゃん?」 「俺、もういらないらしいっすよ」 「…航平、失ってからじゃ遅いよ」 朱莉さんはそれだけ言うと、グラスに入っていた酒を一気に飲んだ。 氷の音がした瞬間、何故か涙が出た。 カッコ悪いとか、朱梨さんの前だとか関係なしに。 理由はわかんねえけど すっげぇすっげぇ涙が出た。 結局その日は、俺は車で来たのも忘れて飲みまくったから 車を運転してくれたのは朱梨さんだった。 「ほんっと馬鹿。早く気付きなさいよ」 朱梨さんは最後に俺の背中を叩いてそう言った。