"うちは笹原杏や。 よろしく、舞子!"

"俺、中村大翔。よろしくなー"


座った途端に話しかけてきた杏に圧倒されてしまったのをよく覚えてる。

あたしの後ろ席が杏で隣が中村だったこともあって、打ち解けるのに時間はかからなかった。


頼れる人がいない中、話しかけてくれる人がいたというのが、あたしにとって最大の支えになった。


あれから、3年になるときにクラス替えがあったけど、見事に3人とも同じクラスになって今に至る。


「にしても、あっついなー…中村の家に着く前に溶けてしまいそうや…」


「やから、あとちょっとやって。ほら、もう見えてるやん。頑張ってや」


「中村。あいつほんま、しばいたろか。乙女にこないな辛い思いさせて」


乙女、には見えないけど。

杏は可愛い。けど、性格はサバサバしていて、少年みたいだ。


「アイス用意してへんかったら、しばく。絶対しばく。」


「多分ね、中村のことやから、用意してへんと思うよ」


ようやくたどり着いた中村の家。

ついた途端に、チャイムを連打する杏。


「杏、やめなさい」


ガチャ、と音がして、開いたドアの隙間から顔を覗かせる中村。表情がものすごく迷惑そうだなー(笑)


「うっさいわ、バカ杏」


「あんたなぁ、うちらがどれだけ暑い中歩いてきたか知らんやろ? しばきたおしたろか?」


「おん、知らん知らん。ええから、さっさと入れや」