「違いますー。達哉と一緒にしないでくださいー。」

あたしはキス魔じゃない。

断じて違う。


「失礼な。いいじゃん、キス魔同士のカップル。毎日キス出来るよ」


「そんな毎日キスばっかいらないよ」


離れたとき、余計に寂しくなっちゃいそうだから。

「んなこと言って。いざ出来ないってなったら寂しいだろ?」


まるであたしの確信をつくかのような達哉の言葉に、ドキッとした。


「うん、寂しいかもしれな…………っくしゅ!!」


喋ってる途中に鼻がムズムズして、思わずくしゃみが出てしまった。


「あぁ、舞子寒い? そろそろ帰るか?」


あたしを気遣ってくれてるのは、痛いほどに伝わってくる。でも、あたしはまだ帰りたくない。

「イヤ。もう少しここにいたい」


あたしがそう言うと、達哉は一瞬だけキョトンとして、嬉しそうに笑った。


「じゃあ、もう少しここにいようか」


達哉だって寒いはずなのに、どこか嬉しそうなのはきっとあたしと同じ気持ちだからだよね?


ベンチに座り直して見た景色を、あたしはきっと一生忘れないよ。