「あぁ、話があるんだ。座りなさい」


あたしがお父さんの向かい側に座ると、お母さんがあたしの隣に座った。


「前にも1回出た話なんだが…」


その言葉を聞いた瞬間に、何となくその続きの言葉が分かってしまった。


聞きたくない。その続きは、聞きたくない。あたしが考えてることと、違えばいいのに。



「転勤が決まった」


鈍器で殴られたような感覚。心臓がバクバクと波打って、何も考えられなくなった。


「舞子ももう高校2年だからな、お父さんが1人で単身赴任しても構わない。舞子が自分で決めなさい。」


そんなこと言われたって、あたしには決められない。そんな重大なこと、あたしが決められる分けないじゃない。


「……いつ引っ越すの…?」


「1週間後だ。」


1週間後………クリスマスの次の日だ。


「ゆっくりでいい、お父さんはどっちでも構わないからな」


お父さんはそう言っているものの、表情は寂しそうだった。

一瞬、ついていこうか、なんて考えたけど、達哉の顔が頭をよぎった。仲直りしたばかりなのに、離れなくちゃならなくなる。


「さぁ、ご飯にしましょう」


お母さんの明るい声が、やけに耳に響いた。

明日、どんな顔で達哉に会えばいいんだろ…