今の彼の手は赤く汚れていて、汚い。いつもの呑気な彼の面影なんて、喧嘩してるときには消えてしまっていた。


「んー…、あいつが舞子にメールしてきてたのが許せなかったんだって。舞子は俺のなのに…」


本気で言っているのか、言い訳をしているのか、分からない。


「達哉……」


言い訳だったとしたら、それほど嫌なことはない。使われているのと一緒じゃないか。


でも、本気で言ってるにしてもダメなんだよね。メールが来ただけで殴り込みに行くなんて、普通じゃない。

それはもう、異常と言っても間違いではないんじゃないかな。


「あたしのことで、感情的になって行動するの、やめてよ。達哉がそんなことするなら、あたしもう達哉には何も相談出来ない。何も、話せなくなっちゃう…」


行動がエスカレートしていくうちに、あたしが達哉に話せることも、きっと限られていく。


「達哉、あたしには何も言わないくせに……あたしと関わった人にはこうやって暴力奮って! 毎回毎回こうやって止めに来られるわけじゃないんだから」


話していいことと
話してはいけないこと

達哉と会話するときに毎回、それを考えなければならない。


そうなったとき、あたしは本気で達哉と付き合っていることに楽しさを感じなくなるだろう。


「……だから言ってんだろ。お前にメールしてきたあいつが気にくわなかったんだって。」