「何やねん中村、死にたいんかな?」


「恐ろしいこと言うなや。」


「ん?死にたいんかな?」


「いやいや、だから…」


「死にたいんかな?」


「死にたくないです、はい。」


聞こえなかったことにしよう。うん、何も聞こえてないよ。大丈夫、杏のこと怖いだなんて、全然思ってないよ。


「花火、上がるんじゃね?」


「そうみたいだね」


2人のことは置いといて。


「あっちー…」


手でパタパタ扇いでいる達哉の額からは、汗が流れている。浴衣着てるあたしの方が暑いはずなのに、きっと達哉の方が汗かいてるし。


「汗かきすぎだよ」


「新陳代謝がいいんだって」


達哉の声と、大きな音が、重なった。


バーン!!!!


「あ、花火」


喧嘩をしていた杏と中村も顔を上げて花火を見る。


「俺、今初めて夏休みの気分味わったわ」


花火を見つめながらそう言う達哉。

夏休みなんて、結構前から始まってるのに。


「どういう意味?」


「7月中はバイトばっかりだったし。8月入っても、舞子いなかったから暇だったんだよ」


「何言ってんの、向井くんがいるじゃん」


「健吾もバイト始めたんだって。全然会ってねぇし。だから、こんな夏らしいことしたの、久しぶりなんだ」


向井くんがバイト…。そっか、向井くんがいなきゃ、達哉が暇になっちゃっても仕方ないね。