中村のことが気に入らないのは分かるけど、高校が同じで友達なんだから仕方がない。仲良くしないわけにはいかないんだから。


「やっぱ怒ってるやん。あたしどうすればいい?」


「怒ってないよ」


……怒ってるくせに。


「…中村のことが気に入らんのやろ?」


そう言ったとき、グッと引き寄せられたかと思えば、視界がグルッと反転した。

背中にフワフワした感覚があって、目の前には白い天井と、達哉の顔がある。


一瞬何がどうなったのか分かんなかったけど、すぐに理解した。

あたしは、押し倒されてるんだと。


「別に、あいつが気に入らないわけじゃないけど、俺嫉妬深いもん。舞子に男友達がいるのもヤダ」


至近距離で見つめられて、心臓がバクバクと音を立て始めた。

その距離はもう10センチもなくて、目を合わせていられない。


思わず目を逸らすと


「こっち見ろよ」


そう言ってさらに顔を近づけられた。


「む、無理!近いよ達哉っ」


こんな状況で、こっちを見ろ、なんて無理に決まってる。


久しぶりに会って、カッコよくなったな、なんて思ってるのに。そんな達哉をこの距離で見ろ、なんて無理。


絶対無理!


顔を逸らしたままでいると、達哉は小さくため息をついて「なんで今更照れてんだよ」と言った。

今更、じゃない!


確かにこういう状況になったのは初めてじゃないけど、いつまでたっても照れるもんは照れるよ。