―さぁ、…早く気づいて…

―もう、すぐ近くまで迫ってる…


―貴方達の力が必要なの…





バッ…!!

「……ハァッ…ハァッ…!!」

荒々しい呼吸を繰り返しながら、1人の女が目を覚ました。
名は白來紫苑(ハクライシオン)、どこにでもいる普通の高校生だ。

だが、この白來紫苑には毎日不思議なことがおきるのだ。


「……ハァ…、また…またあの夢…」

何度も繰り返し、見る夢。
ただ、何度も何度も繰り返し続ける言葉。
だが今回だけは、いつもの夢とは違っていた。


「……``貴方達''って言ったよな…」

そう、夢の中で声を発した人物は確かに``貴方達''と言ったのだ。
その言葉は、今までの夢の中で言われたことながなかった言葉だった。

``貴方達''、それは自分以外に最低でももう一人必要だということだ。


「…ぁ…時間…、…急がないと…」

無理矢理、夢の言葉から思考を切り替えた。
考えても仕方がないと言うことは、昔からわかりきっていることだからだ。


「……おは…、…いない」

何時ものように階段を降り、リビングにいるであろう両親に挨拶をした。
しかし、そこには両親の姿はなくテーブルに朝食とメモ書きが置いてあった。


「……旅行、か…」

メモには旅行に行くと、ただ簡潔に書いてあるだけだった。
紫苑はすぐにそのメモを、ゴミ箱の中に捨てた。
元から両親は、娘には興味がなかったのだ。

ほとんど一人暮らしの状態だったために、親らしいことをされるのが嫌いだったのだ。



「…やべ、早く行かないと…!!」

時計を見ると、慌てたように準備を始めた。
いつものように、朝食を作り―
いつものように、制服に着替え―
いつものように、家にメモ書きを書こうとした瞬間にとまった。


「旅行に行ってるから、メモ書きしなくていいんだな…」

メモ用紙を棚の中にしまい、ソファに置いておいた鞄を掴み玄関に向かった。
それと同時に携帯の着メロがなった。


「…メール?誰からだろ…」

遅刻しないか気になるが、念のため携帯を開きメールを見た。
だが、画面には一文字の漢字が書かれていた。


「……陸(ロク)…?」


簡潔に大きな文字で、漢字の陸が書かれていた。
差出人不明、そしてなぜだかわからないが8:00と調度に送られていた。
偶然なのかもしれないが…。