ロウィの言葉と同時に、一瞬にして辺りが真っ白になった。
そして一瞬にして、大きな城が建つ所に飛ばされていた。
「わ…、お城!?」
「うん、ナイス反応だね。普通の反応はそうだよ」
「普通って…、さっきの``瞬間移動(テレポート)''にも驚いたんだけど…」
莎羅の驚いた顔に、ロウィは嬉しそうな顔をした。
紫苑はそんな2人に軽く呆れながら、城を見た。
「でもね。これは国の一部なんだよね」
「い…、一部?」
「後ろ見てみなよ」
ロウィに言われ莎羅と紫苑は後ろを向いた。
そこには、建物が視界全体に広がっていた。
それだけなら特に驚きはしなかったが、一番に驚いたのは城が浮いているということだった。
「えぇっ!?ひ、広っ!!え、浮いてる!?」
「あはは、サラって本当にいい反応するよねー」
「おい、茶番はそこまでにしろ。長老に呼ばれてるんだぞ」
「はいはい。行けばいいんでしょー」
いつもの様にケラケラしながら返すロウィだったが、紫苑は見逃さなかった。
前を歩くヤヨイを見つめるロウィの顔が、どこか悲しそうだったのを――
「うわぁ…。まるでお姫様になったみたい」
「そうか?あんまりそんな感じはしないけど…」
「夢ないねー、アンタ」
キラキラした目で辺りを見渡す莎羅に対し、紫苑は特に興味がないという顔をしていた。
ロウィは相変わらず、ケラケラしながら紫苑の頭をがしがし撫でた。
「うるさいぞロウィ」
「何よー?あたしだけー?」
「貴様だけだ。シオン達は悪くない」
キッとロウィだけを睨むと、さっさと前を歩いて行った。
そんなヤヨイを見て、紫苑は悲しそうな顔をしたロウィを思い出し、ヤヨイに近づいた。
「ヤ、ヤヨイ…?いいのか?」
「何がだ?」
「そ、の…ロウィのこと」
チラリとロウィの方を見ると、莎羅と何やら話していた。
その様子を見てから、小さく口を開いた。
「いいんだ。アイツはああいう奴だ」
「そっか…。ならいいけど、あんまりキツく言うなよ?ロウィも女の子なんだから」
紫苑の言葉にヤヨイは微かに目を見開いた。
紫苑はそんなヤヨイの様子に首を傾げたが、すぐに前を向かれた為に特に気にしなかった。