「……触ると死ぬぞ」

「えぇ!?嘘っ!?」

あわあわとして慌てた様に触ることをやめた。
その様子を確認した後に、ヤヨイはポツリと呟いた。

「……本当に異世界から来たんだな」

「おう。そうだよ」

「まぁ普通はあり得ない話だよねぇ」

特に気にした様子もなく、またキョロキョロと辺りを見渡した。
ふぅと息をつき、ヤヨイに視線を向けた。

「本当に分からないことだらけだけどね」

「少しずつ分かるように努力するしかないな」


「……そうか」

特に気にした様子もない2人を見て、ヤヨイは微かに安心した様子を見せた。
余裕していたからなのか、前方にいた気配に気づくのが遅くなった。

「!!誰だ!!」

殺気を出しながら、後ろの2人を守る形で立ち塞がった。
そんなヤヨイの姿に、2人は顔を見合わせた。


「――誰だはないんじゃない?ヤーヨイ君?」

「っ!!ロウィ!?」

長いシルバーの髪を靡かせて、黒い服に身を包んだ女が茂みから来た。
どうやらヤヨイと知り合いらしく、驚いた顔をしていた。

「ひっどいなー。あたしを置いて行くなんてー」

「うるさい。何の用だ」

「せっかく来たのにー。ん?後ろの子は?」

少し嫌そうな顔をしたら、ロウィはケラケラと笑った。
そして後ろで首を傾げている莎羅と紫苑に視線を向けた。

「貴様には関係ない」

「冷たいー。まぁヤヨイに聞かなくていいよね。ねぇ、名前は?」

「おい!!ロウィ!!」

キッと睨みつけても、特に気にした様子もなく2人に近づいた。
2人は顔を見合わせた後に、莎羅はおずおずと口を開いた。

「私は莎羅って言います。…よろしくお願いします」

「サラかぁ、可愛い名前だね!!君は?」

ガシガシと莎羅の頭を撫でて、隣にいる紫苑に視線を向けた。
紫苑は一度ヤヨイに視線を向けた後に、口を開いた。


「―人に名前を聞く時は自分から名乗るものだ」

「ちょっ、紫苑…!!」

紫苑の態度に莎羅は慌てたように紫苑の肩に手を置いた。
そんな紫苑の態度にロウィは一度ポカンとするが、すぐに大きく笑いだした。

「アハハッ!!スッゴいねアンタ!!うん。気に入った!!」

「……は?」

「あたしはロウィ。ロウィ・グラディードだよ」

笑いながら紫苑の頭をバシバシと叩いた。
勿論叩かれた紫苑はよく分からないと言う顔をしていた。