古い階段を昇ってゆく。
ギシギシと音がする。
外観はプレハブみたいなアパートの簡易的なドアを開く。
飼っている黒猫が寄ってくる。
パソコンが1台。
無造作に置かれた洋服。
これが私の部屋。
パソコンを開く。
ウィンドウズが起動するネットを見る。
ひとつの出会い系サイトに書き込む。
「これからの時間でホテル代別2で会ってくれる人探しています。」
そう。私は売春婦。
今で言えば、「援助交際」っていうのかな。
それで生計を立てている。
手にしたお金でブランド品を買うこともなく、
手にしたお金で遊ぶこともなく、
手にしたお金で食べることもしない。
そのお金は生活費になる。

それが私の仕事だから。

私のサイトの名前は「朝比奈りん」
適当な苗字をつけたのは既婚者のため。
電話を出るとき、メールを送るとき、登録するときに呼びやすいから。
りんという名前は私が働いてる夜の仕事のときに使っていた名前。
呼びやすいし、何より思い入れの強い名前。
私が愛した愛犬の名前。それがりん。

私は朝比奈りん。
いろんな体験をしていろんなことをしてきた。
悪いことも、いい事も全部。全部。