「ねぇ、どこへ帰ろうとしてるの?」



神崎蒼…


アイツは黒のオーラをだしながらにっこりしている。


「アンタが来ないからもしかして、と思ったんだけど。俺、言ったよね、放課後に図書室って。」



神崎蒼はにっこりしているのに、怒っているのが分かる。



…だって、声がすっごい低いから。



「あ、いや、忘れてるかなぁ…って」



言い訳を考えて、この言葉が頭にうかんだ。


「ふぅん、俺が忘れると思ってんの?」


「えっ?…それは…」


ダメだ、言葉が思い付かない。


つか、アイツからの視線がイタい。


ずっと上げていた顔を下ろす。



「…何逸らしてんの?」


私のほっぺに手をおき、クイッと顔を無理矢理上げる。




「答えろよ。

…棗?」



……え?

今、棗って私の名前呼んだよね?


私、アイツに名前教えてないよ…?


「ど、どーして名前知ってるの…?」


「…知りたい?」


アイツは私を焦らすように言う。


なんだかその声が色っぽく感じる。