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神崎蒼と図書室で逢ってから次の日、私はその事で頭がいっぱいだった。



美緒から「大丈夫?」って心配されたけど大丈夫だよって答えた。



それに、美緒にはまだ言ってない。



…つか、言えない。



親友ならば教えるべきか?

うーん…分かんない…




授業が始まっても頭に入んなかった。



ただ、聞き流しているだけ。


だって、いきなり、抱きしめられたし。


あんなの、初めて。





「―今日はここまで!」



やっと数学の授業が終わって次は移動教室だ。



「棗〜!移動教室だから、一緒に行こ!」


美緒が私を迎えにきてくれた。



「うん、一緒に行こ!」




――――


廊下に出て少し歩くと


「…ねぇ、あれって神崎君だよね!!」


「ホントだぁ!うちら、めっちゃラッキーじゃん!」


他の女子たちが騒ぎだした。



…神崎蒼って……



自分の歩いている方向の反対側に、神崎蒼がいた。



…アイツは昨日の事をどう思っているのだろうか。



アイツは、あんな事他の女子にもやっているのだろうか。…挨拶代わり?



…前を向いたらアイツがいる。



見ると、目が合いそうで嫌だ…



だから、私はずっと下を向いていた。




……どうか、アイツに気付かれないように。



――でも、そんなのは叶うはずもなかった。



「―…また、図書室で」



誰にの気付かれないような小さい声だったけど、私にはちゃんと聴こえた。



…もう、その声しか聴こえなかった…