黒板に自分の名前を書き、正面に向き直る。
クラス中の目が自分に向けられていることに少しだけ緊張しながらも私は口を開いた。


「鈴木みかです。よろしくお願いします」


私、鈴木みかは今日からこの西高等学校に通う高校二年生。
夏休みが開けた直後という微妙な時期というのもあり躊躇ったが、この街は私が中学二年生まで住んでいた街で景色が懐かしかった。

自己紹介を終えた私は後ろの方にある空席に座る。

窓側の一番後ろの席で隣には坊主頭の男子生徒が、前の席には髪の毛が長くてふわふわした感じの可愛い人が座っていた。


「私、笠原みゆ。よろしくね、みかちゃん!!」


さっそく前に座っている笠原さんが声をかけてくれた。
顔も声もすごく可愛らしい。


「うん。よろしく!!」


みゆちゃんと握手をしてふと隣を見ると、男子生徒と目が合った。

坊主頭に鋭い目。
どこかで見たことあるような無表情な顔。


「お前さ、」


男子生徒は急に私を指差して話しかけてきた。


「もしかして俺の事、忘れてる?」


そう言われ私は記憶を辿る。
そして一つの過去とぴったり重なった。
中学一年生の時に同じクラスだった佐藤たくや。


「……たくや?」

「…久しぶりじゃん」