「真星様、早く御興しに乗って下さい。」



真星の体調を心配した伊吹が走ってきた。



「わかっているよ。伊吹、そんなあわてていると転んでしまうよ。」



言われたとたん伊吹は前につんのめる。



クスクスと周りから笑い声が聞こえ、伊吹は恥ずかしそうに頭をかいた。



「行ってきます」



「お気をつけて」



宮は男子禁制のため輿を担ぐのも女だ。



(自分で歩いた方が早い気がする)



輿の窓からゆらゆらと揺れる外の景色を眺める



靄に太陽の光が当たって光って見える。



宮に近づくにつれて、緑の匂いが濃くなり空気が重苦しくなっていくきがした。



それは真星自身の気持ちのせいでもあった。



真星は宮があまり好きではない。



御方様のことは尊敬している。



けれど、何人かの巫女とそれに使える仕女たち。


女ばかりが集まった『神聖』と言われるその場所は、真星が暮らしている空気とは余りに違い、異質すぎた。