帰りの車の中で、啓兄は相当落ち込んでいた。
店で、しかも大勢の他人の前で我を忘れて泣いて喚いたことがよっぽど恥ずかしかったらしい。
それに隣で笑う私の頭を乱雑に撫でるその手に、私はまだココにいていいのだと感じる。
「啓兄、」
「んー?」
「…私、ココに居たい。」
「…そうか。」
そう言って頷き、うっすら目に涙を浮かべながら緩く笑った啓兄に逆に私の涙腺が刺激されてしまうじゃないか。
父さん、お願い、
まだ啓兄と母さんと一緒に居させて。
これじゃ、最早ブラコンに近いと内心苦笑したが仕方がない。幼い頃の私の心境や立ち位置で、啓兄に縋らない方が可笑しいのだから。
これは、言わば不可抗力だ。


