「…それでも、俺とお前は、」
たった一人の兄妹だろうが。
そう言った啓兄は、小さく微笑を浮かべて見せ。私の頭を優しく撫でた。
世界が、あまりにも
曖昧で不成立で、不条理で、
ロマンスのかけらもないくせに、綺麗だから。
悔しいけど、啓兄の手の温かさに泣いた。それはもう、見事な号泣具合だ。後々思い出すたびに、穴に埋めてしまいたいと凹む。
――――親父のとこなんて、行ってほしいわけないだろ。
――――啓、にぃ…!
――――それでも、俺達が勝手にお前の人生を決めるなんてしちゃいけない。
――――でもそれは…
――――関係ないなんて、思ってない。むしろ
家族だから、愛してるから、お前の意志でココを選んでほしかったんだ。
啓兄、母さん、ごめん。
ひねくれた妹で、娘で、ごめんなさい。


