ディア・ロマンス




安い家族愛を描いたようなワンシーンに、辺りは水を打ったように静まり返る。

啓兄にぶたれた頬が、痛いよ。




啓兄を傷付けた私が、嫌い。

悲しませるような言葉を吐いた私が、憎い。

でも、分かってよ啓兄――――――…





たった1人の家族から見離された、私の気持ちを分かってよ。


啓兄に拒絶されたら、これから私は誰を頼ればいいの?私の家なんてない。私に、家族なんていないじゃない。




「――――っ、私は結局、独りだもの…」

「……。」

「引き留めてくれる人がいないんじゃ、昔と何も変わらない…!」

「……。」

「啓兄だって、結局は他人なのよ!!!」










「…人間なんて、裏を返せば皆他人だ。」


そう、呟いた啓兄の声は酷く小さく。うっかりしてたら聞き逃してしまうと思うほどにだ。

屁理屈なそれだけれど、重たく私の胸を圧迫した。