見ているものが、全て歪み霞んでいる。
香ってくるものが、鬱陶しくて仕方ない。
聞こえてくるものも、全てが雑音となって鼓膜を破らんとばかりにウルサく響く。
啓兄、私は、啓兄だけは反対してくれるとばかり思っていたのに。
母さんは、仕方ないと思う。だって、母さんは私の母さんではあってもやっぱり母さんではないから。
――けど、啓兄は?
血は半分しか繋がりがなくても兄妹じゃない。啓兄だけは、私を見捨てないって信じていたのに。
「……だから、私は強くなくちゃいけないの。」
弱さなんて、持ち合わせちゃいけない。
自分から手離す思いでいなきゃ、いつかはこうやって私が手離される。
そうだ、そうだった。
私の呟いた声に弾けるように顔を上げ、押し黙る啓兄に笑いかけた。
「啓兄も、゙父親が同じ゙ってだけで押し付けられた妹のお守りは、もうウンザリだよね。」
鋭く息をのむ音が、リアルな空間を揺らがせた。


