だんだんと不安な気持ちが姿を現し始め、呼んだくせに本題に触れようとはしない啓兄に焦燥感ばかりが先走る。
……本当は、啓兄が言おうとしていることが手に取るようにして分かっているから。焦ってる。
―――お願い、啓兄…
私 を
独 り に し な い で
「…父さんが、玲゙ど暮らしたいって言ってきてるんだ。」
「……啓兄と、母さんは、なんて言ったの?」
「……玲に任せる、て。」
――――嗚呼、やっぱりそうなのね。
美味しいはずの食事も急に味を感じなくなった。それから場の空気を変えようとする啓兄のいつも通りの声が、急に胡散臭く感じた。
目も、耳も、鼻も、口も、味覚も、手も、せして脳も。
私の体は正常な活動を忘れてしまった。


