なんて、思うだけ無駄なのは分かっている。
――それよりもまず。
「(前言撤回なんてしなくても、)」
暁自身がそれを承諾してない以上は、意味がないのだから。
と。
「…なあ、玲。」
「……え、ああ、うん?」
やけに深刻げな啓兄の私を呼ぶ声によって、私は朝から昼にかけての出来事のフラッシュバックから現実へと意識を浮上させる。
そこには声通り、眉根を寄せ厳しい顔付きで烏龍茶片手に私を見つめる啓兄がいて。
そんな顔を見たのは父さんど最後にあった日゙以来だと多少は驚いた。
学校が終わって、だらだらとした足取りで帰宅した私は。丁度同じくして帰宅したらしい啓兄と共にイタリアンのお店に来ていた。
お洒落な内装に小さく歓喜の声をあげた私を見、くすくすと笑って「遠慮すんなよ」と言っていた啓兄の顔とはまるで別人名それ。


