その後、暁が教室に戻ってくるわけもなく。空いた隣の席が何となく寂しいと感じる自分を激しく嫌悪した。
選択科目での美術の時間でも、絵の具の調合で偶然にも近い可能性で出来上がっだ茶色に近い赤゙のそれは直ぐに水道に流して消滅。
水に溶けた赤から、あの「逃がさない」という言葉が聞こえてくる気さえして、筆に黒を含ませそれを押しつけて浸蝕させた。
なにこれ、どこぞの三流ホラー映画かと言いたくなる。
…いや、このケースの場合に心配されるのは私の頭以外の何物でもない。
「(…ああ、もう、)」
惑わされてばかりだ。
癪に触る、私みたいな無愛想な奴を逃がさないなんて趣味の悪い。
…嬉しい、とか。
そんな可愛い、愛されキャラな主人公が言うような台詞なんて。私は絶対に言わない。
ただ少し、前言撤回なんて意志の弱いことを考えている私のなんて愚かなこと。


