ディア・ロマンス




「…いや、玲が、何か辛そうな顔するから。」

「辛い…?」

「自分の目、嫌い?」

「っ、」



ただただ真っ直ぐに、私を見下ろす瞳から逃げるように視線を逸らしてしまった。


辛そうな顔をしていたなんて、自覚がない。それを見せていた自分自身にも驚いたけど、何より私の内心を覗かれたことに一番吃驚した。



゙自分の目、嫌い?゙

そう問う暁の瞳に映る私を見た瞬間、激しく自分の中の何かに失望した。




――――同時に見えるのは、幼い日の記憶




゙玲、コッチにおいで。゙


そう言って、手を伸ばしたのはそっち。



゙玲、もういいだろう?゙


そう言って、手を離したのもそっち。



どうしてまだ貴方は、私と啓兄の中に残り続けるの?消えてくれないの?




だから、だから、貴方なんかに似たこの目が嫌いなんだ。

大切な啓兄との共通点を、ずっとずっと好きになれないんだ。