「(……あ。)」
三笠さんが指した指の先、あれはカップヌードルが並べられているコーナーかな。
私達に背を向けるようにして立っている男の髪の毛は、赤に近い焦げ茶色。
……気付かれたくない。
早く行きましょうと三笠さんの背中を押して足早に裏口に回ろうとした私の耳に届く、自動ドアの開く音と軽快なメロディー。
丁度店の角に身を隠した瞬間だったし、こそっと顔を出すと店を出て行く赤が見えた。
ギリギリセーフとはこのことだ。何だあいつ、朝の仕返しにでも来たんだろうか?
顔を引っ込め、足早に裏口のドアへ身を滑り込ませた。
「だったでしょー?」
「…、」
何が面白いのか、ニヤリと笑う三笠さんを怪訝な目で睨み付ける。
わざとらしく肩を竦めて見せるのもムカツクなおい。無視を決め込む私の耳には、まだ小さな漏れ出た笑い声が聞こえる。
「しつこいんですけど。」
「ああ、ごめんごめん。」


