その次の日もまた次の日も林檎ちゃんは恭狼さんのためにお弁当を作りました。
恭狼さんも黙ってそれを受け取ります。

そんなある日、

「赤井さん。」

林檎ちゃんは今日も恭狼さんのためにお弁当を持って来ました。
ですが、恭狼さんはいつもと様子が違います。

いつも優しい恭狼さんの頬っぺたに痣があり、目は鋭く光っています。


「赤井さん?」

林檎ちゃんも何処か違う恭狼さんに気が付いたようですが、もう遅いです。

恭狼さんは林檎ちゃんの肩を荒々しく掴み地面に押し倒しました。
その拍子に林檎ちゃんのフードが取れ、初めて林檎ちゃんの顔が恭狼さんに明るみに出ました。

恭狼さんは一瞬目を見開きましたが、すぐ細めて鋭い目に変わります。林檎ちゃんは何がなんだか分からなくて目をオロオロさせます。

「こう、したかったんだろ?」

今日初めて恭狼さんがしゃべりましたが、その声は低く恐ろしいものでした。

林檎ちゃんはこんな恭狼さんは知りません。
そして、林檎ちゃんはいつもの恭狼さんに戻って欲しいと、強く感じました。

「違う!あ、いや、その・・・いつかは、その、き、きすとか・・・そそそれ以上もしたいけど・・・い、今は赤井さんと、一緒にいる、だけでもう、もう一杯・・・」

林檎ちゃんは顔を真っ赤にして赤裸々に語ります。
今の林檎ちゃんの思いを全て伝えます。

そんな林檎ちゃんを見て恭狼さんの中にあった熱がすーっと引いて行くのが分かります。
恭狼さんは自分の下で林檎のように真っ赤になっている子がいとおしくなりました。

そして、震えた声でこう呟きます。

「は、はじめてかも・・・」


この時かも知れません、
恭狼さんは本気で林檎ちゃんを食べたいと
強く思ったのは。