「どう言うことなの!」
ファックスから送られてきたプリントの内容に桃井は驚愕した。
「うちの新商品が鬼ヶ島社に盗作された!」
桃井が働く吉備団子社は若い女性をターゲットにしたファッションメーカー。
ファッションメーカーにおいて流行になる商品を作り、何処のメーカーよりも早く出すことは何よりも大事だ。
それが盗作されたのだ。こちらは大被害だ。
「クッソ!やられた。」
桃井は悔しそうに顔を歪める。
もう市場に出た商品はその会社の顔だ。
うちで出しても、うちの顔にはならない。
「どうしますか?桃井さん!」
猿渡が悔しいような悲しいような顔でこっちを見ている。
「裁判だろ!さ・い・ば・ん!こんなの犯罪だ!訴えてやるぜ!」
犬飼が手に持っていた紙をくしゃくしゃに丸め、怒りで真っ赤にしながら言った。そうだろうなヒットを考えて、悩んで悩んで作った商品なのだから。
「裁判はリスクが高過ぎる。」
こんな時でも冷静に事態を把握する雉嶋。
「・・・乗り込むわよ。」
みんなの意見を静かに聞いていた桃井が呟いた。
「え?桃井さん、今なんて?」
「鬼ヶ島社に乗り込むわよ!」
桃井が胸を張って指をさした。
「・・・はっ!そうだ!そうだ!直談判だ!」
犬飼は桃井の意見に賛同して拳を上に挙げた。
「賢い判断とは思えませんね。強引過ぎます。」
これも冷静沈着で真っ当な意見を言う。
「そっそうですよ?だから落ち着きましょうよ。」
猿渡も体を震わせて雉嶋に賛同する。
「それに、新商品が盗作されたのはこの中にスパイがいるからではありませんか?」
桃井は雉嶋のその言葉を聞いて静かに悲しそうに目を細めた。
「・・・それは私も考えたわ。でも私はこの中の誰かがスパイでもきっとその人を許してしまう。だから、」
「光」
犬飼が桃井の肩を叩いた。
「みんな、鬼ヶ島社に乗り込むぞ。」
今度は全員一致の賛成だった。


